渋みと香りが引き立つ紅茶と、渋みが抑えられた甘みがある緑茶。
どちらもそれぞれ違った美味しさがありますが、原料は同じ種類の茶木からくることは知っていましたか?
その共通する茶木の学名は「カメリア・シネンシス」です。椿や山茶花と同じ科であり、ツバキ科ツバキ属の常緑樹です。
本来「茶」とは、この「カメリア・シネンシス」から作られたものを指します。
そして、同じ種類の茶木でも生育環境や製造工程の違いからそれぞれの異なったお茶になるのです。
まず、緑茶と紅茶は茶木の土づくりから異なります。
緑茶は窒素肥料を与えた土壌で茶木を育て、老いた木は若い木に植え替えられます。
茶木は穏やかな気候風土の中で育ちます。一方で紅茶は自然に近い土壌で茶木を育て、老木も重宝されます。
茶木は昼夜の寒暖差が激しい風土で育てられます。
次に、製造工程の違いを説明します。
緑茶は茶葉を蒸してからもんで乾かします。
最初の蒸すときの加熱で発酵が止まる仕組みになっています。
紅茶の場合、茶葉をしおれさせ、もんで、ほぐして発酵させて乾かします。
最終段階まで発酵が進みます。ちなみに、緑茶をイギリスが植民地インドから持ち運ぶ際に自然に発酵してしまって出来たものが飲まれるようになったという説はロマンチックですが間違いです。
そもそも緑茶なら初めの段階で加熱していますから、輸送中に発酵はしません。
正確には、17世紀前半に中国からヨーロッパに初めて紹介されたお茶が緑茶でしたが、お茶の人気が次第に高まり、イギリス人の嗜好に合わせて産地でさらに酸化発酵を進めていくうちに、完全発酵である紅茶が生まれたという歴史があります。
緑茶が「不発酵茶」、紅茶が「完全発酵茶」と言われるゆえんはここにあります。
いかがでしたか。
同じ種類の茶木でも、生育環境と製造工程でまったくの別物になることと、緑茶と紅茶の関係には深い歴史があることを紹介しました。
みなさんも普段何気なく飲んでいるお茶の背景に興味を持ると面白いですよ。