昔から、うなぎと梅干しを食べてはいけないと言われていますね。
かき氷と天ぷらなどは、冷たいものと、油ものを一緒に食べると消化が悪く、消化不良が置きそうですし、当たっているなというイメージがありますが、『うなぎと梅干し』については、なぜなのかちょっと気になりませんか。
・うなぎと梅干しを食べるとなぜいけないのか?
・実際に食べてみたらどうだったか?
・何がきっかけでそんなことが言われ始めたのか?
といったことをまとめてみましょう。
うなぎと梅干しの食べ合わせに根拠はない
なんと実際にうなぎと梅干しを同時に食べても、体に害があるという化学的根拠はありません。
うなぎと梅干しを同時に食べることを避けるように古くから伝えられていますが、実際に食べてみても何でもなかったという体験談を持つ人が多いですね。
現代科学からいうと、むしろ梅干しの酸による消化促進で、食べ合わせとしてはむしろ良いのでは?という説もあるほどです。
なぜ、『うなぎと梅干しの食べ合わせはいけない』という説が伝承されてきたのか理由をまとめて見ましょう。
① 食べ過ぎを戒めるため
梅干しもうなぎも食が進む食べ物なので、どちらも一度に食べると、食べ過ぎてしまうことが多い。
一緒に食べると食べ過ぎの恐れもあるし、贅沢なことだと考えた。
② さっぱりしてうなぎの栄養が薄くなる印象を与えた
梅干しの酸っぱさで、うなぎの脂っこさがやわらげられるため、うなぎの濃厚さを感じにくくなるので、栄養価も落ちてしまうと考えた。
さっぱりしていると感じても、実際に栄養価が落ちてしまうことはありません。
③ 内臓に負担がかかる食べ方と考えられた
脂っこいうなぎと、酸っぱい梅干しを同時に食べると、内臓に負担がかかると感じた人が多かったのではという説があります。
食べ過ぎは胃腸を負担にかけるかもしれませんが、うなぎと梅干しの関係に科学的な証拠はありません。
この3つの理由が説明に使われることが多いですが、うなぎと梅干しを同時に食べることで体に害があるというのは、迷信といって良いようですね。
梅干しのさっぱり効果によるうなぎの食べ過ぎに注意さえすれば、大丈夫と言うことです。
富山の薬売りと食べ合わせ
化学的根拠のうすい『梅干しとうなぎの食べ合わせが悪い』という説が、こんなにも世の中に浸透してしまったのかさらに調べていくと、なんと富山の薬売りが関係しているようなのです。
『富山の薬』と言えば、家庭の常備薬(置き薬)を、直接家庭を回って販売するスタイルを伝統的に取っていますね。
販売促進のためのグッズの中に、食べ合わせ表というものがありました。
その中に『うなぎと梅干し』が載っています。
その昔、柏原益軒の『養生訓』では、『うなぎとぎんなん』が良くない組み合わせとして紹介されていました。
ぎんなんには、チルビリドキシという中毒症状を起こす物質が含まれています。
特に子どもでは7粒以上という、それほど多くない量でも、けいれんなどの中毒症状が出ることがあるので注意が必要です。
はじめは『うなぎとぎんなん』の組み合わせを、悪い食べ合わせとして掲載していたと思われます。
ところが、いつの頃からかうなぎと一緒に描かれる、まるい一口大の食べ物は梅干しという事になって行ったのです。
実際のイラストを見ると「ああ、そうか」と納得です。
食べ合わせ表の印刷は、モノクロでもカラーでもないけれど、赤、青、黒を基本とした版画調の印刷です。
全体に赤を多く使う事で華やかさを出したいという狙いがあったと想像できます。
一口大の丸い食べ物が赤い方が見栄えが良いですし、梅干しの方がぎんなんよりも身近な食べ物という印象もあります。
薬売りとしては、食べ合わせの表などをお客さんに見せて、急な体調不良に置き薬を備えておく必要があると言うことをアピールしたかったのでしょう。
普段口にするものでも組み合わせを気にしないと、腹痛を起こしたり、命に関わることがあったりすると印象づける目的で作られた『食べ合わせ表』のお陰で、うなぎと梅干しの組み合わせを避けるという事が広まってしまったといえます。
まとめ
○ うなぎと梅干しは食べても体に害はない
○ 多くの食べ合わせの伝承は、富山の薬売りの食べ合わせ表から広まった
○ うなぎと梅干しではなく、元はぎんなんだった
○ ぎんなんは、中毒を起こすことがあるので、子どもに食べさせすぎない
うなぎと梅干しを一緒に食べるとなぜいけないかについてまとめてきましたが、食べ過ぎさえ注意すれば、体に害になる事はないのですね。
富山の薬売りは、『食べ合わせ表』などを使って、健康対策を示して置き薬の大切さをアピールするなんて、訪問販売のうまさを感じます。
庶民に受け入れられやすいように、健康法をふれてまわり、それが伝承されて民間療法的に残っているものも多いのかもしれません。
うなぎと梅干しのなぞを調べることで、ちょっと昭和以前の人々の暮らしにふれたような気がしますね。