フランケンシュタインと言えば、ハロウィンの仮装モンスターとしても人気で、誰もが巨大で不気味な怪物の姿をイメージ出来ます。
もともとフランケンシュタイン博士が作り出したモンスターという事で、『フランケンシュタイン』と言えば、『死体を寄せ集めて再生された怪物』と言うことになったのです。
フランケンシュタインは実在したのか?
『フランケンシュタインの日記』というフィクションがあります。
かなり細かい手の込んだ作品で、ヒューバード・ヴェナブルスの編集によるものとして1995年に日本誤訳が出版されています。
人が死んで腐敗して行くことを研究し尽くすことで、死体を蘇らせる事が出来ると考え、おぞましい実験を繰り返していた様が描写されています。
死体を盗み、臓器を抜き取り実験を繰り返しますが、脳だけは生きたものが必要だと考えて、とうとうこどもをさらってしまうというのです。
人として犯してはならない一線を越えながら、実験を成功させ怪物フランケンシュタインを作り出してしまったという日記を読んでいくと、実在の人だったのではないかと思えてきます。
しかし、この日記を書いた人物”フランケンシュタイン博士”が実在の人物だったという確証は得られていません。
・『フランケンシュタイン』が書かれたのは、1816年で、原作が書かれたときに日記を参考にしたかどうかは、明らかになっていない。
・命を蘇らせる研究を行っていた科学者はいたと思われるが『フランケンシュタイン博士』との結びつきがハッキリしない
フランケンシュタイン原作者は19歳の女性
『フランケンシュタイン』の原作者は、メアリー・シェリーという女性で、19歳のときにこの作品を書きました。
1816年のことです。
当時、妻子あるパーシー・シェリーと駆け落ちし、詩人のバイロンの住むレマン湖畔に逗留していた事がありました。
このとき、バイロン、バイロンの同性愛の恋人ポリドリと、バイロンの元恋人のクレアの5人が一緒に生活していて、当時はやっていたオカルトや、怪談についての書物を読んだり、議論したりということがありました。
そこで、バイロンが「面白い怪奇小説をそれぞれが書いてみよう」と提案し、『フランケンシュタイン』が誕生したのです。
マッドサイエンティストと呼ばれる、背徳の実験を繰り返していた科学者の、実話か創作かわからない話を参考にしていたかもしれませんが、『フランケンシュタイン』そのものは、シェリーの創作と考えるのが本当のところなのです。
実在のフランケンシュタインと呼ばれる人物とは?
フランケンシュタインのときに引き合いに出される怪物として『ホムンクルス』が有名です。
15世紀から16世紀にかけて実在したスイスの医学者、パラケルススの実験内容をまとめて見ます。
新しい生命体の誕生を目的として…
・人間の精液、ハーブ、馬糞を密閉した状態で、馬糞が発酵する状態40日間保つ
・フラスコの中に透明な人間のかたちをしたものが現れる
・生き血を与えて40周養育する。(馬の胎内と同じ温度に保つ)
こうして誕生したのが、やや小さいものの、人間のこどもとそっくりな『ホムンクルス』というわけです。
しかし、フラスコの外に出したり、生き血を毎日与えなかったりするとすぐに死んでしまいますし、パラケルススの他に実験に成功した科学者がいないということで、実験が本当に成功したのかはハッキリしません。
他に、18世紀から19世紀にかけて実在した、アンドリュー・クロスも生命体を作り出したと言われていて、実在のフランケンシュタイン博士と呼ばれることがある科学者です。
けれども、こうした実験は現代の科学での検証に耐えうるものではなく、いまだに、生命体そのものの創造に成功した科学者はいないのです。
まとめ
○フランケンシュタイン博士は実在の人物とは言いがたい
○引き合いに出される科学者や錬金術師と呼ばれる人物はいるものの、確証はない
○『フランケンシュタイン』は19歳の女性が原作者のフィクション
『フランケンシュタイン博士の日記』という本があまりにもリアルなので、そうした文章を目にした人が信じてしまったというのが本当のところでしょう。
オカルト雑誌では、科学を根底から覆す発見が取り上げられることがあっても、全くのフィクションかどうかは伏せられていることがあります。
ファンタジーとして取り上げられているのと言う暗黙の了解があるからです。
でも、ちょっと怪奇な現象や物語は、人の心を引きつけますし、「本当だったらこわいなあ」とドキドキしたり、ストリーから人間の性や運命について考えさせられたりもします。
そういった意味では、ちょっとしたエンターテイメントとして受け入れられていると感じます。
『フランケンシュタイン博士の日記』についても、メアリー・シェリー原作の『フランケンシュタイン』についても、優れたフィクション作品なのです。